大切にしてきた人形やぬいぐるみ。思い出が詰まっているからこそ、捨てることに抵抗があるという方も多いのではないでしょうか。そのようなときに選ばれているのが「人形供養」です。
今回は、人形供養の意味や流れ、供養してもらえる場所、費用相場などを詳しくご紹介します。
人形供養とは?
人形供養とは、思い入れのある人形やぬいぐるみを感謝の気持ちを込めて手放すために、神社やお寺で魂抜きや浄化の儀式を行ったうえで処分する日本の習慣です。
日本では、古くから「人形には魂が宿る」と信じられてきました。そのため、ゴミとしてそのまま捨てるのは「罰当たり」と考える方も少なくありません。特に、子どものころに遊んでいた人形や、大切な人から贈られたぬいぐるみなどには、持ち主の思い出や感情が強く宿っています。
人形供養は、そうした感情を整理し、穏やかな気持ちでお別れするための手段として、多くの方に選ばれています。
人形供養の流れ
ここでは、神社や寺院で行われる人形供養の一般的な流れをご紹介します。
- 供養を受け付けている場所を探す
- 人形を持ち込む、または郵送する
- 供養料を納める
- お焚き上げ・読経などの供養の儀式
- 供養後の処分
複数の人形やぬいぐるみをまとめて供養してもらえることもあります。供養の儀式は、見学や立ち会いが可能なところと、立ち会いできないところがあるため、希望があれば事前に確認しておきましょう。魂抜きの儀式を終えた人形は、寺社が責任をもって適切に処分してくれるので安心です。
人形供養はどこでしてもらえる?
人形供養は、神社やお寺でおこなってもらうのが一般的です。人形に縁のある寺社では、毎年決まった時期に人形供養祭が開かれることもあります。また、参拝が難しい場合は、自宅から申し込める民間サービスを利用する方法もあります。
神社での供養
一部の神社では、人形供養を受け付けています。ひな人形や市松人形などを対象に、祝詞をあげて魂を慰めるのが特徴です。中には、毎年「人形感謝祭」や「お焚き上げ供養」といった行事を行っているところもあります。郵送による受付に対応している神社もあります。
寺院での供養
仏教の儀式として読経やお焚き上げをおこなうお寺も多くあります。宗派によって作法は異なりますが、「感謝の気持ち」と「浄化の祈り」が基本です。中には、たくさんの人形を集めて大規模な供養をおこなう寺院もあります。
民間の供養・回収サービス
神社仏閣と提携して、郵送や集荷で供養を代行するサービスもあります。自宅から申し込めて、ガラスケースの分解や梱包のサポートをしてくれる業者もあるため、手間をかけずに依頼できるのが利点です。
葬儀社・仏具店の供養サービス
葬儀社の中には、人形供養を含んだプランを用意しているところもあります。仏具店でも、提携寺院と連携して定期的に供養を行っていることがあります。専門的な知識をもつスタッフが対応してくれるため、形式にこだわりたい方も安心です。
供養の対象になる人形の種類
「どんな人形が供養の対象になるの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。基本的には、人の形をしたものであれば、多くの神社や寺院で供養の対象とされています。
例えば、毎年飾っていた雛人形や五月人形、昔ながらの市松人形やこけしなどの日本人形、さらにはリカちゃん人形やバービー人形といった現代のおもちゃまで、幅広く対応しているところがほとんどです。
そのほかにも、知育人形やぬいぐるみ、陶器の人形やガラスケース入りの立派なもの、アンティーク調の西洋人形や民芸品のような民俗人形まで、「人形として心を込めて接していたもの」であれば、たいてい受け付けてもらえます。
ただし、神社や寺院によっては対象外のものがある場合もあるので、供養を依頼する前に確認しておくと安心です。
人形供養の費用相場
人形供養の費用は依頼先によって異なり、「1体あたり」または「1箱あたり」で料金が設定されることが一般的です。
持ち込み対応の寺社や葬儀会社では、1体500円~10,000円が目安となり、高価な人形はやや高額になる傾向があります。一方、郵送対応のサービスでは、段ボール1箱あたり1,000円~15,000円が相場。箱のサイズや内容によって追加料金が発生することもあり、送料や手数料の有無も確認しておくと安心です。
民間サービスでは、送料や梱包キットが含まれたパッケージプランを用意していることもあるので、比較検討すると良いでしょう。
思い出とともに、人形を見送るという選択
大事にしていた人形やぬいぐるみを捨てるのは、どうしても心苦しいものです。しかし、引っ越しや実家の片付け、身のまわりの整理をする中で、大切にしてきた人形との別れを考える場面が訪れることもあります。
長い間そばにあった人形には、幼い頃の記憶や、家族との時間、特別な節目の思い出が重なっていることも多いでしょう。ただ捨てるのではなく、「きちんと感謝を伝えて手放したい」と思ったとき、人形供養という選択があります。
人形そのものが手元からなくなっても、過ごした時間や思い出は、ずっと心の中に生き続けます。見送るという行為は、「さようなら」ではなく、「ありがとう」を伝えることでもあります。
大切なものときちんとお別れをしたいとき、心を込めて見送る人形供養を、一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。